はじめに

君の呼びかけに誰も答えないならば、
君よ、我が道を一人ゆけ。
皆が恐れを抱いて沈黙するならば、
君よ、開いた心と恐れなき声をもって、ただ真実のみを語れ。

インドの詩聖        
ラビンドラナート・タゴール

はじめに

~出航前夜~ 

深い海。

漆黒の暗闇の中の、絶対孤独。
変化の方向性が見えない、混沌とした自己喪失。
閉ざされた世界の深淵に横たわる、究極の絶望。
そして、行き先のない未来への、声にならない悲痛の絶叫。

出口の見えない、深い海。

「私たちが生きる時代は、今からどのような方向に向かって進んで行けばよいのか。」

私は、かつてこの「問い」に対し、ひとり孤独にこの世界の真相と対峙しながら、この蝕まれ病んでいく世界と地球を根本から解放させるには、果たして一体どうすればよいのだろうかと、考えうるありとあらゆる角度から、心身を賭して追究しました。
しかしながら、どうあっても未来の希望につながる明確な解決策を得ることはできませんでした。日本と世界が抱える多様な問題を根本的に解決して、人類が本当に新しいパラダイムへとシフトするには、既存のどんな解決法でも、人間の「ある決定的な限界」を超えられないと思ったのです。
そして、少なくともこの日本の中からはもはや世界の大きな変革の道を切り開くことは絶対に不可能だと思い、諦めと失意の中で出した答えは、「絶望」の二文字でした。

ピラミッド型支配構造の社会システムのもと、永遠に続くかに思われる対立と収奪と闘争の歴史。個人から社会、さらには国家、世界、生態系のシステムまでが着実に瓦解していく時代。
尽きることのない不信や不安、孤独、疎外の世界の中心で、耐えきれなくなった人間の悲痛な魂の叫びが響きわたるこの時代。
閉ざされた心、破壊された愛。
自己否定や鬱、いじめや暴力、真の愛と信頼が得られない心の疎通の限界、人間関係の断絶、そして、生きる力と生きる意味そのものの喪失。
私たちが生きる時代は、暗雲立ち込める未来の見えない広漠とした海をさまよいながら、必死で次に向かうべき進路を模索しているような状況ではないでしょうか。
私も、そしてあなたも、この地球上で同じ時代を生きている一人の人間として、運命を共にするひとつの船に乗り合わせている乗客のようなものです。

果てしなく永い航海を経て今を生きている人類の歴史の海路の最先端で、
私たちが乗るこの時代という名の船は、歴史の暗礁に乗り上げて沈没してしまうのか。
あるいは、暗く深い霧に閉ざされて難破してしまうのか。
それとも、未来へと続く新たな希望の航路を見出すことができるのか。
人類の歴史は今、ひとつの航海を終え、新しい航路へ向けての選択を迫られているのです。

運命のめぐり合わせとは不思議なもので、闇が極まって光が生まれるように、私の人生はある人との出会いによって、劇的な驚きと感動と共に、大きく転換しました。
それはまさしく漆黒の暗闇の中で出会ったひとすじの光であり、言葉を変えれば、私にとって「希望」との出会いに他なりませんでした。
その出会いによって私は、人生の究極のテーマとして考えていた「問い」に対する明確な答えを得ることができたのです。
その時の私の驚嘆と感動は、言葉にしようもありません。
私は、すべての問題の根本的原因を明確に悟り知ることにより、この時代の方向性を自分なりにはっきりと見出すことができるようになりました。
その方向性について一人でも多くの方々と共有できればと思い、本書を書くことにしました。
共有したいこととは、例えば次に示すようなことです。

・誰もが幸せに生きられる未来社会、全ての人類が幸せに生きられる世界は必ず実現可能であること。
・これまでの人類の思想、哲学、宗教、科学等の知の探求を、ひとつの知の体系によって大統合させることが可能な時代が到来していること。
・宗教と科学の相克を超えて、両者が説く真理が統一される時代が到来していること。
・様々な宗教宗派が説く真理がひとつに融和して、お互いに理解、尊重し合える世界は共有可能であること。
・物質文明の恩恵と限界を補う精神文明が開花し、双方が融合して生命文明の創建へ向うようになること。
・これまでの人間の歴史の悲劇にピリオドを打てる時代が開けること。
・この日本から、全世界に対してひとつの明確な新しい希望の道が提示できること。
・日本の奥深い精神、大和の心とつながった悟りの世界が一般常識化されていくこと。
・悟りの世界を科学的に現実に応用した、平和で幸せな社会づくりが始まっていくこと。
これらを一日も早く現実化し、人間本来の可能性や尊厳性、愛や平和や自由の意志を大きく目覚めさせ、地球生命全体社会が共生共栄できる創造性に満ちた時代を開かなければなりません。
これは、今の時代に生まれた私たち一人ひとりが絶対に避けては通れない使命であることを、私は確信しています。そして私はその使命のために人生をかけて、歩むべき道を歩んでいこうと思っています。

本書では、今まで私たち人類が辿ってきた歴史の航路が一体どのようなものだったのか、思想、哲学、宗教、科学、政治、経済、歴史、文明等の本質を横断的に照らし出しながら、幅広く深い観点から、人類の歴史の全体像を整理しています。
また、私なりの明確なひとつの答えを持って、「今まで」と「今から」の時代の大きな変化の方向性を、なるべく広い観点から整理し、書き進めていこうと思います。
細かい具体的な内容に関しては記述の及ばないところも多々あるかと思いますが、どうぞご容赦ください。
本書を通して、時代が新しい世界へと向かう一助になれば、心から嬉しく思います。
そして、現在も社会の変革に取り組まれている方のご意見や観点と交流し、共により良い社会を創っていけることを、心から願っています。
この日本から、人類共通の夢が実現できる希望の大航海時代を開くために。
そして、私たちの未来、生まれくる生命たちの、笑顔あふれる平和な世界を願って。

平成二十二年(二〇一〇年)六月一日
山王公園の深緑の季節に

内海 昭徳

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