心惹かれる人・夏目漱石


私は小説はほとんど読まないのですが、
いつか時間が充分にゆっくりと取れたなら、
読み込んでみたいなと思っている作家が数人います。

その一人が、夏目漱石です。

なぜ漱石に心惹かれるのか自分でも理由はよく分からないのですが、
江戸時代最後の年に生まれ、明治という時代と重ね合わせるように生きた
漱石の生涯の心の動きそのものを感じながら、
作品順に全部読んでみたいなと、心ひそかに思っています。

神経衰弱やうつ病を患っていたともいわれる漱石ですが、
人間の心の普遍性のようなものを丁寧に観察していた
人物としての印象を私は持っていて、漱石が観ていた世界から、
当時の時代背景と人間の心のありようを透かしながら読んでみたいと思うのです。

昨今はとにかく手軽で実用主義的な読書法が流行っていますから、
自分好みの小説家がいる人はきっとほとんどいないのではないでしょうか。

かくいう私もその部類なのですが、本の読まれ方があまりにも
実用的、合理的、理知的、ファッション的になってしまっている傾向に
対して、もう少し深さが伴えばいいのになと思っています。

無味乾燥な暗記教育の弊害もあるでしょうし、
著者の心とつながらない単なる情報獲得技術にすぎない速読法が
これだけ広まっていますから、心を育み耕す読書の味わい、読書の醍醐味
というものは、もはや瀕死の時代なのかもしれません。

何度も読み返してみたい愛読書、座右の書といえる
小説や人生指南書がある人は、きっと心に潤いがある人ではないでしょうか。

ゲームや漫画もいいですが、確定された視覚情報を単に脳にインプットする
だけの媒体よりは、文字から無限にイマジネーションを
膨らませることができる良い小説に沢山ふれることは、とても大切なことだと思います。

日本人の国語力、語彙力、読解力は、おそらく凄まじい速度で
低落してきていると私は思っています。

豊かな語彙力は、広く深く緻密な思考を展開させるのにとても大切な役割を果たします。

美しい文章表現、美しい情景描写に心打たれる、という経験が
学童期にしっかりできる教育が見直されたらよいなと思っています。


世界に類をみない明治維新の背景には、江戸時代の日本の教育水準の卓絶した
高さがあったことは、多くの識者が認めるところです。
武士は幼年期でも既に多くの漢文漢籍をそらんじていたといいます。

今、日本社会の未来を考える上で、
教育の大切さ、国語力の大切さが、もっともっと深く見直されるべきだと思います。

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Comments Closed

“心惹かれる人・夏目漱石” への0件のコメント

  1. Law より:

    いつも拝見しております、初めまして。
    (というのも何だか不思議、度々内海さんの講演聞いております)

    本が大好きな20代です
    内海さんのブログを読んで、
    「メディアから溢れる様に流れてくる情報に疲労感を感じるけれど、その点で”だから本はいい”」と高校時代に話してくれた友を思い出しました

    情報処理専攻高校に通っていたが故、
    10代であらゆるプログラミング言語を操り
    ひたすら情報処理に努めていた時です

    情報処理が物理的にIT分野で行えていても

    今の時代、人間の精神的な部分の情報処理が巧く作用していない印象を切に感じます

    本を読まない=読解力が低下する、それ故”自分に置き換え考える”ということを難しく感じる人が増えているのかな…と。

    長文失礼しました

  2. autsumi より:

    Lawさん貴重なコメントどうもありがとうございます。

    本を深くじっくりと読み込む、
    そしてそれをじっくりと味わい、考えてみる。

    その、精神的な部分の情報処理の深さと細やかさが見直されたらいいなと
    思いますね。

    機械的に情報の入力、出力ばかりを繰り返すだけでは、
    深い人間性や思考力はなかなか育っていかないだろうなと…。

    Lawさんのような経歴の方がそういう観点を持たれることは
    とても意義深いと思います。

    どんどん読書の意義を伝えていってくださーい。

    • Law より:

      実は私、テレビもPCも持っていないので…

      猫撫でながら本を読むしか、過ごし方が他ないんです。笑

      今回の記事を読んで、自分のブログに好きな本の紹介をしようっと思い立ちました。

      電子書籍がある時代ですが、装丁・帯も作品の一部と感じているので、本の厚みや重さを感じながら読む という至福を止められないのです

      今この時代、自分は珍種かもしれないですねー..

  3. 桜空 より:

    私は、本を読み進める事が遅くて、
    それに対して
    「読むまでに時間がかかり、人より損をしている!」
    と思っていました。

    内海さんのブログを読んで、
    そんな私の未熟なポイントも、
    『だからこそ』の良さも感じる事ができました。

    有難うございます♪

  4. autsumi より:

    桜空さん、コメントありがとうございます。

    知識ばかりがいっぱいで、
    情報ばかりが詰まっている無機質な脳みそよりも、

    人の心、著者の心、登場人物の心、

    そういう心と深く響き合える感性をこそ、ゆっくりと大切に
    育んで生きたいですよね!